羊のことば

小さく小さく

神様コンサルタントを選ぶべき理由

心に病を患ったとき、何かの空虚に耐えられなくなったとき、あなたはどのような手段を選ぶだろうか。

一番に対処しなければならない耐え難い感情をまずは取り払ってしまいたい、と思うだろう。

最初はあなたは一人で悶え苦しむかも知れない。でもそれがいずれはひどくまずいことになる戦略であることをいち早く察知するだろう。

何かを失ってしまう。時間に由来する何かを。であるから何かを始めなければならない。ということでいくつかの方策を思いつくことになる。

スピリチュアルは、週刊誌に載っている、最もカジュアルな手段となるだろう。 ただ少し、重みに欠ける向きはあるかも知れない。 人生をカジュアルに捉えるには悪くない選択肢だが、大人が選ぶには多少甘ったるさが目立つ。 ごく幼い感受性から成り立っているため、あなたの苦悩が深く荒んでいればいるほど、ひどく頼りなく思えるようになるだろう。

趣味に没頭するのは良い選択肢とは言えない。 なぜならあなたはその深い苦悩によって一つの境を飛び越えてしまったのだから、いまさら幼心の執着に由来する習慣などに戻ることに意味はないのだ。 意味はあなたの中にある。 あなたの選択いかんによっては、あなたは何者でもなくなるような危機が実はすぐ隣りにあるのだということを自覚しなければ。

時間だけではだめだが、時間と愛するものを再び探す旅の組み合わせはいかがだろうか。 まずまず、知性が垣間見える良い意見ではある。 その根本に喪失の無力化を、冷酷なまでに追求しようという意志が感じられる。 しかし、その戦略はあまりにリスクに対して寛容すぎる。あなたは再び絶望を味わうことになるに違いない。 それでも、その絶望を遅延させるには最も良い選択であるだろう。

ついに、あなたは二つに一つを選ぶことになる。 哲学か宗教か。 他の諸々の代替らはそのどれもが哲学か宗教かのどちらかを拠所にしている。 いやその視点こそがこの話の要点でもあるのだが。

哲学は多くの人には耐えられないだろう。 哲学は答えではないからだ。 哲学は過程であり、過程の本質であり、答えが無いことが答え、つまり、終わりが無い終焉だからだ。 哲学はその特性上不死である。ゆえに不死がもたらす不利益すべてをあなたにもたらすことになるだろう。

そこで宗教は、もうこれは本当に優秀なパッケージとしておすすめする。 ただし、これすらすでに古くなっていることに大勢が多分気づいているのだろう。 95年のあの事件以来この国ではそれはある意味タトゥーのような扱いを受けるに至った。 この国はそろそろ西洋人のミーハーでしかない女性解放運動だけでなく、宗教ハラスメントも止めたらいい。

そんな宗教の利点は、哲学と違い明確な答えを出しすぎるほどに出していることだ。 この世で最も才能のある人間が紡ぎ出した世界を享受できる。世界とは彼らの創作物のことだ。

最近は高速度数量所有信仰(現代資本主義)がお盛んではあるが、いささか事の興りの蓋然性に欠けるところがある。 その点宗教の多くは神か神に準ずるものを擁して枠組みから世界を逸脱しないようにさせる戦略をとっている。 神の設計は非常に難易度が高い代わりに、それに成功すると驚くほどの信仰性を獲得する。 人はそれに満たされることができることが分かってきている。

我々神様コンサルタントはそんな宗教に心の底から崇敬の念を覚えている。 であるから、悩める子羊たちにはぜひとも実績と信頼の伝統宗教を選んでいただきたいものだ。 本当に心から、我々はそれを望んでいる。

だが、どうだろう、そう簡単でも、ないことが、この無宗教時代に、よく明らかになっているのではないか。 この時代はもう、宗教を選ぶことを体制とはしていない。むしろ、宗教はスピリチュアルがプラスチックのように脆弱過ぎるのに対して、豪華客船のように堅牢過ぎている。 宗教は大洋をゆうゆうと横断できるかもしれないが、氷山にぶつかれば為す術もなく大海原に沈んでいってしまう。 そこから逃げ出す術はない。

そこで、我々が提示するのはあなたに合った宗教、あなたが信じられる物語。 それはあなた自身が思いつくには辟易するほどに集中力と時間を要するもの。 我々プロが時と場所を跨いで評価されてきた、ありとあらゆる信仰の様式の中から少しずつ要素を抽出し、加工し、冶金する鍛冶屋のようにあなただけのクラフトをお届けする。 それはあなたのためにカスタマイズされた宗教、あなただけの真実、あなたの世界。

あなたの病状に即した、きちんとあなたの傷を埋めてくれる、この世に一つしか無いあなたのための物語を提案いたします。